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安全第一という言葉の意味を深く知る

      2020/06/07

「安全第一」という言葉は、おそらく日本の社会人のみならず子どもでも知っているキーワードです。

労働安全衛生においては、非常に重要なキーワードである「安全第一」ですが、本来の意味や起源について知っている方はそう多くいないように見受けられます。

そこで今回は、「安全第一という言葉の意味を深く知る」についてご紹介していきます。

 

安全第一とは

「安全第一」とは、工場や建設現場などの職場や現場において安全を最重要として考える標語(スローガン)です。

安全第一(safety-First)の標語(スローガン)は、1901年に当時の世界第一の製鋼会社となったUSスチール(現USX社)より設立されました。

1900年代初頭のアメリカ合衆国は、非常に不景気で生産設備においても荒れ果て、大災害が相次いでいた社会的状況でした。

USスチールの社長であったエルバート・ヘンリー・ゲーリーは労働者たちの苦しむ姿に非常に心を痛め、「同じ神の子である人たちがこんな悲惨な災害を被り、不幸な目に合っているのは見るに忍びない」と考え、業界一般の経営方針である「生産第一、品質第二、安全第三」を「安全第一、品質第二、生産第三」に改めました。

熱心なキリスト教徒でもあったゲーリーは、人道主義の精神から経営姿勢を「safety-First」に変革し、ミシガン州の荒野に今日のゲーリーシティと呼ばれる人間中心の画期的な工場都市を建設しました。

ゲーリーの経営方針は、第二次世界大戦時の労働者不足にもかかわらず、生産性も高く、災害もなく、品質も優れていて「safety-First」は全米を一世風靡しました。

 

安全第一が日本に輸入される

大正5年、北米旅行を続けていた前逓信省管理局長の内田嘉吉氏は、アメリカ国内の行く先々で「SAFETY FIRST」という文字を目にし、大きな感銘を受けたそうです。帰国後、大正5年(1916年)に安全第一運動を提唱しました。

翌年の大正6年(1917年)には、「安全第一」を広めるために蒲生俊文氏らとともに安全第一協会が設立され、安全第一運動は全国に広まって昭和3年に第1回全国安全週間がおこなわれました。

 

安全第一は、多くの事業場や工場において、「安全第一」の看板を見かけますが、作業者の注意力喚起として利用されています。

今日では本来の人道主義的トップポリシーとしての言葉ではなく、現場の作業者の注意力に安全を求める言葉として、誤用されることが多くあります。

しかし、歴史を紐解くと、安全第一というスローガンはトップに課せられる経営姿勢のことを指しており、作業者のみならず、まずはトップの経営姿勢に対する言葉であることを深く認識する必要があり、ゼロ災害を防止していくこともトップの決意表明が大切になることは忘れてはなりません。

 

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